大型構造物試験センター

超高層ビル,長大橋,大型船をはじめ,構造物は巨大化,複雑化している。本施設は,これら構造設計の根底となる力学的挙動の研究のため,5か年にわたる調査・研究を重ね,1975年12月に完成した。試験スペースは,構造物試験機,反力壁をもつテストフロア及び棟外試験場に大別される。構造物試験機は,最大圧縮試験荷重30MN,引張試験荷重10MNの容量と主柱の内のり間隔が広く,大きな試験空間を有している。テストフロアAは,床にテストリグを設け,多くのジャッキで荷重を試験体に与えることのできるスペースで,試験体の大きさに追随するテストフレームが用意されている。構造物の静的・動的外力に対しての挙動を把握するための構造物疲労試験機や擬似動的試験装置など反力壁との複合使用により,多様な実験を可能にしている。テストフロアBには構造物の耐震性能を高い精度で確認する多入力振動試験装置が設置されている。棟外試験場は,構造物の施工実験,試験体の製作・建方等広範に利用できる試験環境である。
国内外には構造物試験機を設置した多くの構造試験所があるが,本施設は,大学設置としては最大規模を有している。

30MN大型構造物試験機

構造物設計の力学的挙動の研究は,構造物の力学的解析とこれを裏付ける実験とによって発達してきた。理論解析の面では,コンピュータの発展による技術の進歩は複雑な構造解析を可能とし,これに対応する実験もより高度の手法が求められる。特に,材料の塑性域を含む非線形の領域では,構造モデルから実際の構造物の挙動を類推できない場合が多く,また,理論を飛び越えて実際の構造物を造りあげることが必要な場合もある。このような場合には,実大か実大に近い大きさの試験体での実験が要求され,試験機もこれに見合った大型となる。本機は,以上のような目的で(株)島津製作所によって製作された構造物試験機で,仕様書作成に約8か月,設計から納入まで約3年を要した。

30MN大型構造物試験機とテストフロア

30MN大型構造物試験機とテストフロア

大型構造物試験棟外観

大型構造物試験棟外観

主要研究題目

ロードセルの校正試験
油圧ジャッキのキャリブレーション
高強度鉄筋コンクリート杭の圧縮試験
推進管の圧縮試験
テーパーコーンの押抜き耐力試験
中空部材の構造システムに関する研究
仮設足場の安全性確認試験
免震積層ゴム支承の性能評価
鋼柱の座屈試験
スライドジョイント曲げ試験
十字継手の引張耐力破断試験
接合部継手引張試験

わが国の大型構造物試験機

30MN 1975 日本大学理工学部
30MN 1977 国土交通省土木研究所

試験機本体の主要仕様

最大容量 圧縮
引張
曲げ
30MN
10MN
正曲げ 6MN  逆曲げ 3MN
荷重レンジ   30MN,12MN,6MN,3MN,1.2MN
荷重計測方式   シリンダ内圧測定式
主柱 本数
内のり寸法
4
3×3.6m
ラム 位置
本数
ストローク
下ラム
圧縮用4,引張用1
1m
耐圧盤間隔   最長10m
ベッド 寸法
レベル
X方向22m,Y方向10m
試験空間   圧縮・引張とも同一空間で試験可能。
圧縮・引張方向の連続載荷可能。

テストフロアと反力壁

構造物試験機にはフレームやネジ棒があるため,試験体は限られた大きさになる。また,荷重が2,3軸の場合にも制約を受けてくる。そこで,床に,ネジ孔を介してフレームを固定し,多くのジャッキで所要の荷重を試験体に与えるようになる。このような目的で作られた床をテストフロアという。地震力のような水平方向の荷重は,テストフロアと一体となった壁で反力をとるが,このような壁を反力壁という。つまり,構造物試験機では試験機に合わせて試験体を製作するのに対して,テストフロアでは試験体に合わせて載荷装置を構成することになる。国内外の構造試験所では,ほとんどがこの両者を備えている。テストフロアのネジ孔は,一点500kN,反力壁は,水平力で3MN,モーメントで12MN・mの容量である。

主要研究題目

プレストレストコンクリート部材の復元力特性に関する実験的研究
曲げを受ける鉄筋コンクリート造はりの寸法効果に関する実験的研究
中空プレストレストコンクリート部材による構造システム接合部に関する研究
張力膜構造の載荷試験
南極昭和基地居住棟実大構造ユニットの耐力試験
住宅用基礎鉄筋の定着方法に関する研究
鋼製ハイブリット床版の載荷試験
浮桟橋の実験的研究

載荷試験(反力壁・テストフロア)

載荷試験(反力壁・テストフロア)

施工・載荷試験(テストフロア)

施工・載荷試験(テストフロア)

多入力振動試験装置

構造物の各支柱に異種の地震入力があったとき,耐震性の高い精度で確認する方法を確立するため製作((株)島津製作所)された。水平2軸振動台1基,水平1軸振動台2基から構成され,各振動台を個々に異なる波形で揺らすことが可能である。2基の1軸振動台を水平に振動させることにより,大スパン構造物の支柱間での平行ズレの状態が再現でき,また,1基を移動させて2基とも一直線に並べることにより伸縮的なズレが再現できる。さらに,3基の振動台を組み合わせることにより,3本の支柱に順次地震波が入力していく状態を現出することなどが可能である。(本装置は,多入力擬似動的試験装置とともに財団法人日本船舶振興会の補助により,財団法人日本科学協会が「軌道空間都市の実用化研究」事業実施の一環として製作,1991年11月に譲渡されたものである。)

多入力振動試験装置

多入力振動試験装置

主要研究題目

多入力振動試験装置
制震装置の性能検証
耐震強度確認評価
免震装置の振動実験
摩擦ダンパーの応答性状に関する実験的研究
すべり摩擦型免震構造の研究
低域振動数の計測に関する研究

擬似動的試験装置
プレストレストコンクリート部材のせん断性状に関する実験的研究
鉄骨柱部材における部材特性
南極昭和基地用木質パネルのせん断及び変形性能に関する研究

構造物疲労試験機
鉄筋コンクリート造ト形柱梁接合部の動的載荷実験
金属構造物の荷重応答特性の調査研究
ゴム防舷材の動的特性調査

棟外試験場
テンセグリティ・ブリッジの建方・載荷実験
間伐材を用いた建物の経年変化に関する研究

詳細

http://www.str.cst.nihon-u.ac.jp/

問い合わせ先

船橋校舎
TEL:047-469-5362
E-mail:office@str.nihon-u.ac.jp