道路面とその周囲の構造物の位置情報を取得するシステムとして、モバイルマッピングシステム(MMS:Mobile Mapping System)と呼ばれる計測機器がある。車両に3Dレーザスキャナ、IMU、GNSS機器を搭載することで、走行しながら3次元の座標値を持つ点群データを取得することができ、道路地図作成のほか、道路上の標識やマンホールといった道路付帯施設の調査等への利用が期待されている。しかし、得られる点群の座標値は、GNSSにより得られる車両の位置座標が基となるため、観測箇所によって測位精度が悪化する課題が挙げられる。
交通システム工学科空間情報研究室では、トンネル等の衛星不可視区間での利用に対応するため、MMSの測位精度を補正する調整用基準点を交通総合試験路上に設置し、GNSSによる位置座標を利用せずに路面の3次元点群データを取得することで、最適な基準点の設置間隔について検証を行った。その結果、GNSSによる位置座標が得られない時間が長くなるほど、MMSの測位精度が悪化する傾向が確認され、計測時の走行速度に応じて調整用基準点を設置する必要があることがわかった。今後は、交差点等の走行速度が変化する箇所での調整用基準点の設置間隔について検証を行う予定である。
(理工研NEWS66号より)
写真1 モバイルマッピングシステム(Trimble MX8)
写真2 3次元点群データ(交通総合試験路)