電子工学科の塚本新 教授は,これまで,超高速高密度情報記録に関する研究など,先駆的な研究をしてきており,その中でも,フェムト秒パルスレーザーによる磁化応答計測・制御に関して世界最先端の研究をしています.フェムト秒とは10の-15乗秒という従来技術的に利用されてきたよりも遥かに短かい時間領域です.
塚本教授は,これまで,文科省科研費による研究「フェムト秒パルスレーザーによる磁化応答計測と高速磁化反転制御」(2006〜2007年度若手研究(B))や,JST「さきがけ」研究の「革新的次世代デバイスを目指す材料とプロセス」(2007〜2012年度)の中の研究テーマ「フェムト秒パルス・レーザによる超高速スピン制御・計測」(2007〜2010年度)などを実施してきており,現在は文科省科研費の新学術領域研究の一つである「ナノスピン変換科学」(2014〜2018年度)の中の光学的スピン変換班の研究分担者として研究を進めています.
そして,平成25年度からは,5年間の文科省「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」の支援を受け,「超短時間光・物質相互作用の理解・制御が切り開く新材料・物性・デバイスの探索と創生」の研究代表者として活躍されています(2014年12月6日には,第11回理工学研究所講演会として,成果報告会を行っています).
塚本教授は,超短パルスレーザを用いることで,超高速磁化応答の分析を可能とし,これまで知られていなかった興味深い現象が起こることを明らかにしてきています.例えば,超短単一パルス光照射のみによる光誘起完全磁化反転現象の実証実験に成功しており,これは将来の超高速磁気メモリに活用できるものと注目を浴びています.
また,2014年には,ラドバウド大学ナイメーヘン(オランダ)の橋本佑介博士研究員、NHK放送技術研究所と共同で、磁性体中の磁化情報を「フェムト秒の時間分解能」,「マイクロメートルの空間分解能」,そして「メガピクセルのイメージサイズ」で観測する新しい超高速時間分解磁気光学イメージング装置を開発し,低ノイズ高感度CCDカメラ、GPUを用いた並列データ処理と最適化された独自のアルゴリズムにより,従来技術と比べて約4,000倍と飛躍的な実験速度向上を実現しています(理工学部のニュースのページをご覧ください).
フェムト秒という超短時間領域での光と磁性体との間の作用に関する実験的知見や理論体系は未踏領域であり,塚本教授らにより,超高速分光計測手法の開発や,理論モデルおよび計算コードの開発等が進められ,この分野がますます発展していくことが期待されます.
なお,塚本教授の最新の研究成果は,塚本研究室のホームページなどでご覧いただけます.
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